転生したら、モブでした(涙)~死亡フラグを回避するため、薬師になります~
「ローデンヴァルト先生は、婚約者とか、恋人とか、いないの?」

「いるように見えるのか?」

「まったく」

はっきり言い切ると、ムッとした表情となる。いそうだと言ったら、笑顔になったのだろうか。ちょっと時間を巻き戻して、言い直したい。そんなことはさておいて。

婚約者や恋人がいないことが確認できたので、お願いしてみる。ここは、ローデンヴァルト先生に犠牲になってもらうしかないだろう。

「なんでもするので、一緒に参加してください……!」

「年若い娘が、なんでもするとか言うな」

「なんと言って頼めばいいのか、わからなくて」

気さくに頼めるような相手にはとても見えない。生き血と引き換えに……と、今にも言いだしそうだった。

ローデンヴァルト先生は見た目こそ怖いが、中身はわりと普通の兄さんである。雰囲気と見た目でおおいに損をしているタイプだろう。

「わからないって、普通に頼めばいいだろうが」

「では、ローデンヴァルト先生、普通にお願いします」

「お前な、わざと言っているだろう?」

本気だと返したら、盛大なため息をつかれてしまった。

「わかった。特別に、付き合ってやるから」

「やるから?」

「今度発表する研究の整理を手伝え」

交渉成立である。当日はよろしく頼むとばかりに手を差し出したのに、無視されてしまった。釣れない人である。
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