転生したら、モブでした(涙)~死亡フラグを回避するため、薬師になります~
「少し黙れ」

ローデンヴァルト先生は私とクロード・フォン・アラビガムの間に割って入り、低い声で忠告する。

「な、なぜ、あなたが偉そうに、忠告するのですか!?」

「その、権利があるからだ。彼女と俺は、将来を約束している」

非常に紛らわしい発言をしてくれる。単に、魔法学校の卒業後、見習い薬師としてローデンヴァルト先生のもとで働くだけなのに。まるで「私達、結婚します!」と宣言しているように聞こえてしまう。本当に、不思議だけれど。

「二度と、グレーテに話しかけるな。虫けら野郎が」

わりと酷い物言いだったが、返す言葉が見つからなかったのだろう。クロード・フォン・アラビガムは素早く踵を返し、この場から立ち去った。

ローデンヴァルト先生の背中は、ピリピリと苛立っているように見えた。猫だったら、毛が逆立っていただろう。荒ぶった馬を落ち着かせるように、「どーどー」と心の中で言いながら背中を優しく撫でる。すると、荒ぶった空気はいくぶんか和らいだ気がした。

ローデンヴァルト先生は私の手をそっと握り、人の少ないほうへと誘導する。いったいどこに連れて行こうとしているのか。
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