転生したら、モブでした（涙）～死亡フラグを回避するため、薬師になります～

ローデンヴァルト先生の部屋で三十分ほど休み、再び会場へと戻る。

すると、見知った顔が私達のもとへ接近してきた。

立派な白髭を蓄えた老齢の男性――魔法学校の学園長である。

「やあやあ。まさか、ローデンヴァルト先生も参加していたなんて。一緒にいるのは、“魔法薬学科”のリリエンタール君だな」

彼は慈善家としても有名だ。将来有望な国家魔法薬師を支援するために、参加していたのだろう。

ローデンヴァルト先生と学園長は、握手を交わす。

「いやはや、驚いたよ。君に、教師の才能があったなんて」

「別に、俺に才能があるわけではなく、生徒が優秀なだけで」

「それもあるな。リリエンタール君は、過去最高の成績を残しているそうじゃないか！」

ポンと、肩を叩かれる。学園長に褒められることなんてないので、なんだかゾワゾワしてしまった。なんだろうか、ローデンヴァルト先生に褒められたときには感じなかった、緊張感みたいなものを覚えてしまった。

「ローデンヴァルト先生、来年も、“魔法薬学科”の教師を務める気はないか？　なんでも、希望している生徒がいるようなんだが」

「いや、来年は、国家魔法薬師として、働く予定だ。教師は、二度としない」

「ならば、三学期末に、“魔法騎士科”の特別授業をしてくれないだろうか？」

「それは、なぜ？」

「いや、魔法を使った戦闘能力もなかなかのものだと、風の噂で聞いたものだから」

「魔法騎士には叶わない程度の戦闘能力だ。一年間授業を受けてきた生徒に、敢えて教えるものはない」

「そうか。残念だ」

なんでも、学園長は今期限りで、学園長を辞めるらしい。そのため、特別なことをしてから去りたかったようだ。