転生したら、モブでした(涙)~死亡フラグを回避するため、薬師になります~
出てきた偽物の私を、モフタロウは警戒する。うなり声を上げつつ、前に飛び出してきた。まだ、様子を窺っているのだろう。襲う気配はない。

これは、いったいなんなのか。考えていたら、室内が黒い靄の中に包まれた。くらりと目眩を覚えたが、それも一瞬のこと。

靄が晴れた時、モフタロウと対峙する形となって驚く。偽物と私の立ち位置が、入れ替わっていたのだ。

「え!?」

狼狽えている間に、もう偽物の私が叫んだ。

『モフタロウ、偽物をやっつけるのよ!!』

「は!?」

偽物が、私とまったく同じ声で命じる。モフタロウは『がう!』と返事をするように鳴いて、私に向かって突進してきた。

「ちょ、ちょっと、待て!!」

咄嗟に出た言葉に、モフタロウは反応する。突進せずに、直前で止まった。

『モフタロウ、何をしているの? あいつは、偽物だから!』

「何を言っているのよ! あなたが偽物でしょう?」

モフタロウは私と偽物を交互に確認する。くんくんと、匂いもかいでいた。

おそらく、あの偽物は私の匂いまでも、完璧にコピーしているのだろう。
< 182 / 245 >

この作品をシェア

pagetop