転生したら、モブでした(涙)~死亡フラグを回避するため、薬師になります~
話をしつつ歩いていたら、あっという間に講堂に到着した。オペラ劇場みたいな、クラシックな建物である。中にはすでに大勢の生徒が集まっていた。

「ニコラ、“魔法騎士科”の列はあっちだって」

「え、ええ。ありがとう、ございます」

「じゃあ」

立ち去ろうとしたら、ニコラは急に私の手を掴む。

「あ、あの、グレーテ様、また、お話、できますか?」

その問いかけに、ぐっと怯んでしまう。正直、もう関わり合いになりたくない。けれど、大雨の日に捨てられた子犬のような瞳で見つめられてしまった。可哀想になり、掴まれた手を払えなくなる。

それに彼女は、前世でのめり込んだゲームの主人公だ。見捨てるなんて、できるわけがない。

「どうか、お願いします」

「ま、まあ、少しお喋りするくらいなら、構わないけれど」

「グレーテ様!!」

ただ話すと返しただけなのに、ニコラはポロポロ涙を零す。

「ちょっと、ニコラ、こんなところで泣かないで。私が泣かせたみたいじゃない」

「す、すみません、嬉しくって……!」
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