転生したら、モブでした(涙)~死亡フラグを回避するため、薬師になります~
「グレーテ、本当に感謝しているわ。今度、お礼をさせていただくから」

「いや、大したことはしていないから」

「しましたわ。わたくしがやせ我慢をしているところを、颯爽とやってきて、助けてくださったでしょう?」

「まあ、そうだけれど、辛そうだったし、見捨てられなかっただけで」

 なぜ、医務室に行かなかったのかと問いかけると、フロレンツィアは顔を俯かせる。

「だって、恥ずかしいから」

「え?」

「お腹を壊しただなんて、乙女の口からすらすら言えるわけがありませんわ」

なんでも、緊張するとお腹が痛くなってしまうらしい。

「フロレンツィア様が、緊張を?」

「フロレンツィアで結構よ。そんな驚いた顔をして、当たり前じゃない。わたくしだって、緊張くらいしますわ」

ちなみに、初級の軽い回復魔法を使える私と違い、フロレンツィアは回復魔法をまったく使えない。そのため、毎回医務室に駆け込むしかなかったようだ。

たしかに、年若い娘が他人にお腹を壊しているだなんて、なかなか言いにくい。腹痛薬さえあれば、他人の手を借りずとも症状を和らげられるのだろうが。
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