転生したら、モブでした(涙)~死亡フラグを回避するため、薬師になります~
馬車で三十分の道のりは、ヒポグリフォンだと十分程度で到着する。

「あ、だから先生は、馬車で乗った私のすぐあとにやって来たんだ」

「どうやって来たのだと思っていたんだ?」

「いや、神出鬼没だな、としか」

正直に答えたら、ジロリと睨まれてしまう。

毒薬師として名を馳せているようだが、優しい面もあると知ってしまった今、そこまで怖いとは思わなくなっていた。それに、先ほどからヒポグリフォンが『クルルゥ』と甘えた声で鳴き、アルノルト・ローデンヴァルトの肩に頬ずりしている。さらに、鼠妖精達が走って出迎えてくれた。

『おはようございまちゅ!』

『すがすがしい天気でちゅうね!』

『お茶の準備をいたしまちゅわ!』

鼠妖精のネネとズズとミミは、今日も愛らしい。なんなのか、この、癒やされ空間は。幻獣や妖精に好かれるなんて、滅多にないことだろう。彼はただ、人に対して愛想がないだけなのだ。多分。

上空で怖がる私のことも助けてくれた。見た目が怖いだけで、いい人なのだろう。

これからは敬意を込めて、ローデンヴァルト先生と呼ぼうと心に誓う。
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