転生したら、モブでした(涙)~死亡フラグを回避するため、薬師になります~
ここでふと気付く。私は、どのキャラクターに転生したのかと。甦った記憶が完全ではないので、思い出せなかった。

起き上がって寝台のサイドテーブルを探り、眼鏡をかける。そして、部屋に置かれた姿見を覗き込んだ。同時に、ハッとなる。

猫みたいなアーモンド型の目に、平々凡々な目鼻立ち。容姿は、前世の私と同じだ。けれど、波打った亜麻色の髪に、緑色の瞳は前世と異なる。

この姿形は、“魔法学校のエーデルシュタイン”に数多く登場する群衆(モブ)のひとりだ。

姿絵の公式イラストもなければ、名前すらない。茶色の波打った髪に緑の目を持ち、眼鏡をかけた解像度低めのドット絵があるだけの、目立たないキャラクターだった。ゲーム内での役割は主人公にテストの範囲を教えたり、テストの順位を教えたりする。

悪役令嬢フロレンツィアによって校舎が爆破されたあと、そのキャラクターはゲームに登場しなくなるのだ。

つまり爆破に巻き込まれ、死んでいた設定なのだろう。

前世ではモブキャラの生死なんて、まったく気にしていなかった。けれど、巻き込まれる当事者となれば、話は別である。
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