転生したら、モブでした(涙)~死亡フラグを回避するため、薬師になります~
お昼の時間である。談話室に、食事が用意されていた。円卓の上には、おいしそうな料理が並んでいる。すべて、鼠妖精達が用意してくれたものだろう。

ローデンヴァルト先生と向かい合って、食べるようだ。先生とふたりっきりで昼食なんて緊張するが、生徒は私ひとりなので仕方がない。

ローデンヴァルト先生も、若干の居心地悪さを感じているようだ。

「あの、無理して一緒に食べなくても、いいので」

「いや、慣れていないだけだ。わざわざ別室に移動するのも面倒だから、我慢する」

はっきり「我慢する」と言ってくれたので、笑ってしまった。

「何がおかしい?」

「ローデンヴァルト先生が、正直すぎるからから。ごめんなさい、笑ってしまって。でも、実を言えば私も若干気まずいなと思っていたから」

家族と食事をし、楽しく会話するなんて記憶はない。両親の仲は険悪で、揃って食事をする機会すらないからだ。

「家族がいるのに一緒に過ごさないなんて、贅沢な話なのかもしれないけれど」

「いや、家庭には、さまざまな形があるだろう。自分の中にある価値観だけで、推し量れるものではない」
< 68 / 245 >

この作品をシェア

pagetop