転生したら、モブでした（涙）～死亡フラグを回避するため、薬師になります～

それにしても、どうしてこうなったのか。

よくある転生もののネット小説や、アニメでは、家柄もよく容姿端麗な主人公に生まれ変わったり、神様から特別な力を授かった状態で異世界に転移されたりしている。

一方の私は、キャラクターデザインもなかったモブキャラとして生まれ変わった。実家であるリリエンタール子爵家は歴史は浅く、財力も縁故もない。兄弟はなく、ひとりっ子なので、婿を取らないといけないのだ。

この国は女性にも爵位の継承権が認められている。そのため、私は将来女子爵として家を盛り立てないといけないのだ。

堅実な父は私に説き伏せていた。「優秀な者を、夫とするように」と。狙い目は、貴族の次男や三男だ。

ただ、爵位を持つ女性と結婚したがる男性は多くない。配下に置かれる立場が許せないからだろう。

ただ、実力がある女性は別らしい。相手の力に惚れ込んだ場合は、伴侶としての立場を受け入れる。

そのため私は魔法学校へ入学し、優秀な者を夫として迎えるための実力を手にしようとしていたわけだ。

ただ、私が悪役令嬢の暴走イベントで死んでしまったら、その努力も無駄なものとなるだろう。思わず、頭を抱え込んでしまう。

いや、まだ、この世界が“魔法学校のエーデルシュタイン”と同一の世界だなんて、決まったわけではない。私の妙な思い込みである可能性もある。

そうに違いない。馬鹿な勘違いだ。私はそう思い込んで、気にしないようにした。

社交場に“魔法学校のエーデルシュタイン”の主人公、ニコラ・マルクスがやってくる日までは。