転生したら、モブでした(涙)~死亡フラグを回避するため、薬師になります~
鍋の中のジャガイモを完食したところで、ローデンヴァルト先生がボソリと呟いた。

「グレーテ・フォン・リリエンタールは、変わっているな。焼きイモを喜んで食べる貴族令嬢なんて、聞いたことがない」

「ローデンヴァルト先生、他の貴族のお嬢様に、焼きイモを作ってあげたことあるの?」

「いや、ないな」

作ったことがないのに、変わり者扱いされるのは遺憾である。抗議したのに、無視されてしまった。

「まあ、この先貴族令嬢に焼きイモなんぞ作る機会もないだろう。俺の生徒は、お前ひとりだけだろうから」

その物言いは、この先の生涯、誰も傍に置くことはないという宣言にも聞こえた。

なんとなく、寂しい気持ちになってしまう。

「あ、そうだ。“魔法騎士科”に、平民の生徒がいて、今度三人で焼きイモパーティーをしましょうよ」

「なんだ、焼きイモパーティーとは。聞いたことがない」

「今、決めたから。楽しいと思う、きっと」

 “魔法騎士科”の平民生徒とは、ニコラのことである。なんとなく彼女も不安がっていたので、誘ったら喜んで応じるだろう。

ローデンヴァルト先生は、私やニコラの知らないおいしい料理を知っているはずだ。
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