世界中が敵になっても私を好きでいてくれますか
事務所に着くと、慌てた様子で俊介さんが走ってきた

「龍さん!早く社長の所へ」

何が何だかわからないまま社長室に入ると、暗い顔で社長がこっちを見た

「失礼します。あの…話って」

少しの沈黙のあと社長がある写真を見せてきた

「この写真どういうことなの?」

そ、それって…

なんとそれは、龍と晴がキスをしている写真だった

この写真は昨日の…

「あの…この写真どこで…」

「昨日の夜中たまたま見かけたんです。これ、龍さんで間違いないですよね…?」

そう俊介さんは言った

「霧山。正直に答えて。これは事実なの?」

2人の視線が一点に集まる

そのまま長いようで短い沈黙が続いた

「…この写真の通りです。社長達が思っているままです」

晴と付き合ってることに嘘はつきたくない

いつか言わなきゃいけないんだ

それが今なんだったら

ちゃんと言わなきゃ…

社長は腕を組んでため息をした

「あなた、今の状況をわかってるの?自分が何をしたかわかってる?」

「すみません。でもわかってます」

すると、社長は机を強く叩いて立ち上がった

「わかってないわ!傷つくのはあなただけじゃないの!!相手の子もファンの方々も、メンバーのみんなだって傷つくことになる。あなたそれをわかってるの?」

「社長!落ち着いて…!」

俊介さんが社長の肩を抑えた

こんな社長初めて見た

龍はゆっくりと深呼吸をした

「俺…責任取ります。ForeverOne脱退します」

俊介さんが目を見開いて龍を見た

「だめよ。今あなたが脱退したらどれだけの人が悲しむかわかる?4人のことも考えて。やっと夢を叶えたみんなから夢を奪うの?」

社長が椅子に座りながら言った

じゃあどうすればいいんだ…

何が正解なんだよ

「1週間あげるわ。その間にその子としっかり話して関係を切りなさい」

晴と関係を切る?

「そんなことできるわけ…」

「あなたに他の選択肢はない」

龍が握っている拳がより強くなった

「社長に心はありますか?一方的に別れろって、いくらなんでもおかしいですよ!アイドルは…人を好きなっちゃだめなんですか?」

「だめよ。アイドルはみんなのアイドル。恋愛をすることは許されない。そんな気持ちなんだったら、最初からこの世界なんて向いてない」

最初からこの世界に向いてない

その言葉に何も言い返せなかった

社長の言ってることは全て正しい

こんな中途半端なやつがアイドルになる資格なんてなかった

「話は以上よ。また1週間後ここで話しましょう。その彼女も連れてきて」

ドアが閉まった瞬間、崩れ落ちた

そして、床を強く何度も殴った

すると俊介さんが近づいてきて、龍の肩をつかんだ

「やめてください!龍さんらしくないです」

龍は俊介さんの手を払って下を向いたまま立ち上がった

「らしくってなんですか…。本当の俺なんて誰にも分かるわけないですよ。自分でもどれが本当の自分かわからないんだから」

顔をあげた龍は涙目になっていた

それを見た俊介さんは肩に置こうとした手を降ろした

「悔しいんです。無力な自分に腹が立つんだす。俺ってこんなに弱かったんだって」

でもこれだけは言える

晴を好きになったのはまぎれもなく本当の自分だって

「あなたは強い人です。そんなの社長だって私だって分かってます。社長だって苦しいんですよ。わかってあげてください」










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