世界中が敵になっても私を好きでいてくれますか
あの日、外は雨が降っていて

都内のコンビニで夜中の勤務を終えて帰ろうとしていた

普通は親とかに怒られるかもしれないけど

それを叱ってくれる親もいない

いないわけじゃないけど

私はあんな人を親だなんて認識してない

今日もいつもと変わらない風景が広がっている

「いつも途中で抜けさせていただいてありがとうございます」

「いや逆に助かってるよ。夜中勤務してくれる人は少ないから」

高校生だという理由で早めに上がらせてもらっている

事情を知っていて配慮してくれている店長には感謝しかない

そしてもうすぐ晴の住んでいるマンションに着きそうだというとき

いわゆるヤンキーと言われる男たちがたむろしていた

うわだいぶ酔ってる

周りには通り人が何人かいて、皆迷惑そうにしていた

携帯を見ながら視界に入れて彼らの様子を見ていると

その中心には1人の女性の姿があった

「なぁお姉さん暇そうじゃん?この後俺らと遊ぼうよ」

集団で言い寄られ、困っている女の人

今にも泣き出しそうな彼女の顔を見た私は傘を投げ捨て無意識に体が動いていた

「あの、やめてあげてください」

あ?と一斉に顔を向けられた

「だから、嫌がってるからやめてあげてくださいって言ってるんです」

「君さ高校生だよね。こんな時間に夜遊びですか?」

集団のうちの1人が晴の肩を掴みながら笑って言った

「あなた達みたいな意気地無しと一緒にしないで」

集団で取り囲まれる晴

今にも震えそうな体を必死で抑える

「女の人相手にこんな大勢で、恥ずかしくないんですか」

「お前あんま調子のんなよ。ガキが」

殴ろうと腕を後ろにひく男

晴はその場で目をつむった

パンッ

その音は拳が頬に当たった音ではない

おそるおそる目をあけると

目の前には眼鏡にマスクをした男の人が立っていた

男の拳を片手で抑えこみ、逆に寸止めの拳をいれた

「これ以上騒いだら警察呼びますけど。今ならまだ間に合いますよ?」

そう言いニヤッと笑う男の人

「いつか覚えてろよ」

晴の耳元で囁いた後、男たちは悔しそうな表情で去っていった

「あのありがとうございます!」

女の人は高校生に守ってもらっちゃうなんて…と泣きながら安心したように笑った

「そんな気にしないでください」

と晴は微笑んで彼女を見送った

安心したのか肩の力が抜けたのを感じた

正直なんであんなことしちゃったのかわからないけど

結果オーライってとこかな

そして後ろを振り返ると助けてくれた男性が

「あ、あの…ありがとうございました。ごめんなさい。こんな濡れちゃって…」

晴は彼に向かって深々と礼をして言った

「大丈夫だよ。君もびしょ濡れだけどね?」

すると優しくにこっと笑った

「あの、うち近いし、乾燥機あるんで服乾かします!」

「そんなこと。いいってば」

「助けてくれたお礼ってことでだめですか?」

すると彼はじゃあ。と呆れた顔で承諾した
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