世界中が敵になっても私を好きでいてくれますか
龍のマンション

昨日急に会いたいと言われたのだ

どうしたんだろう…

でも嫌な予感がする

部屋に入ると、その空気感で予想が的中したことを感じた

龍は飲み物を机におき、椅子に座った

何も話し始めない龍を見た晴はタイミングをはかって話し始めた

「龍?あのさ…話って」

龍の顔がかすかに固まった

「俺と晴が付き合ってることなんだけどさ……事務所にバレた」

え…

うそ、なんで?

「晴が連れさられたのを助けたあの日、帰り道に俺達がキスしてるのをマネージャーが見たらしい…ごめん」

龍が謝ることじゃない

あの日、あの時2人とも完全に油断してた

私が龍に助けを求めたから

「事務所にはもちろん別れろって言われた。でも…でも俺は晴と絶対別れたくないって思ってる。だから、脱退するつもりで…」

だめ

そんなの…

「だめだよ…。龍はアイドルやめちゃ絶対だめ。私なんかのためにやめないでよ。龍は私だけの龍じゃないから」

「じゃあ晴は、別れてもいいってこと?」

晴をみながら震えた声で言った

「そんなの嫌に決まってるじゃん。でも私の幸せは、龍がありのままに生きてくれること。龍が脱退して、その後悔をもったままずっと我慢しながら私と一緒にいたって、私は全く嬉しくない」

龍の目から涙が流れてきた

そして、頭を抱えた

「晴…っ。ごめん。ほんと情けなくてごめんな…」

どんな顔をすればいいんだろう

何が正解かなんてそんなのわかんない

でももうこれ以上龍を苦しめるのもいや

私が1歩踏み出さないと…

そうだ、笑おう

私は大丈夫だよって

安心してって

笑ってあげよう

「別れよっか」

「え?」

「出会う前に戻ろう?まだ間に合うから。思い出がいっぱいできる前に…きっと時間がたてば忘れられるから」

優しく龍を抱きしめた

彼のぬくもりがより一層晴を悲しくなる

「最後ぐらい笑顔で終わろうよ。泣いてる龍なんてかっこ悪いよ?」

耐えろ…私

もう少しだけ耐えろ

私がここで泣いちゃったら龍は私を手放せなくなる

切れそうになるほど、唇をかんだ

そして龍の頭を擦りながら上を向いた
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