世界中が敵になっても私を好きでいてくれますか
交際がバレてから約束の1週間が過ぎた

結局あの後、2人は別れるという決断を出した

「「失礼します…」」

社長室に入ると、マネージャーさんと社長が椅子に座って待っていた

「神崎晴です」

「神崎さんね。話は聞いているわ。で、結果は決まったのね?」

これでもう終わりなんだね

龍と一緒にいた時間は短かったけど、濃い毎日だったなぁ

って思い出したら涙が出てきそうだからやめよう

龍は下を向いてる

「脱退は…しません………」

じゃあ彼女とは別れるのね?と聞いてきた社長に、龍は首を横に振った

すると社長は眉をひそめて龍をみた

「あなた何言ってるの?そんなの認められるわけないでしょ?」

龍…

私だって別れたくない

でも…もうどう足掻いても無理なんだよ

「アイドルとしての俺じゃなく、素の俺のことを見てくれたのは彼女が初めてなんです。俺のために泣いてくれて、俺のことすごく理解してくれて、俺と一緒にいるだけで幸せって言ってくれた。脱退のことを話したら、俺がありのままに生きることが自分の幸せだって。だから別れようってそう言ったんです。でも俺、諦めたくない。そんな彼女のこと手離したくない。お願いします。見守っていてくれませんか?」

彼の目からは強い決意が感じ取れた

そして龍は深く頭を下げた

晴も無意識のうちに頭をさげていた

「お願いします!見守っていてくださいませんか?」

ずっと黙っていた俊介さんがファイルを閉じながら口を開いた

「龍さん。覚悟はありますか?この先何があっても神崎さんを守るという覚悟が…。芸能界はそんなに甘いところじゃない」

まるで過去のことを思い出しているような話し方だった

「私には歳の離れた兄がいて、アイドルをしていました。そして、兄には龍さんと同じように愛する人がいました」

そして社長がその会話に入ってきた

「もう何年もたっているからこのことを知っているのは、この事務所にもごく数人しかいないんだけど。その時の社長は、彼の勢いに押されて交際を許可したの。でも、バレた時、彼は彼女を守りきれなかった。世間から批判された彼女は自殺。彼は精神的な病気になってしまって結局グループも脱退。そのグループはそれが原因で解散。この事実を知ってるからこそ簡単に許可は出せないの」

そんなことが…

全然知らなかった

私達と似てるからなんとなく怖くなる

「兄も龍さんと同じことを言っていました。どんなに苦しいことがあっても、彼女を守り抜くと…でも結局無理でした。それから兄は、彼女の自殺は自分のせいだと、心を閉ざしてしまいました」

自殺…そんな…

そんな未来考えたくない

震えている晴に気づいたのか龍が晴の手を掴み微笑んだ

「俺は絶対に1人にしません。もし世界中が敵になっても、絶対逃げません。全ての覚悟はできています。だからお願いします!」

それから社長が考え込んでいた

沈黙の中、自分の鼓動が聞こえてしまいそうなほど早く、大きくなった

社長は呆れたような口調で言った

「…絶対隠し通しなさい」

「え?」

「あなたの覚悟よくわかったわ。その代わり充分に注意して。なんかあったら私達にちゃんと言って。わかった?」

「ありがとうございます!!!!」

2人で目を合わせて笑った

許可がでるなんて…!

ありがとう、龍!

本当にありがとう
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