ドラゴン・ノスタルジア
「…?…わかった」
私は2階にある自分の部屋から、紺野君に借りていた本を持って来た。
カフェに戻ると梅ばあちゃんが、大地に向かって再び怒鳴り声を上げていた。
「世界中に伝染病が広がった今、人間達はただでさえ恐怖に怯え、迷い、助けを求めています。我々がここにいるべきではありません」
「…俺は病原菌か」
「いいえ。でもドラゴンは、人を怖がらせます」
「…」
私と目が合った大地はこちらへ近づき、私を突然抱き上げて、店の外へと飛び出した。
「…!!」
お姫様だっこ!
「待ちなさい大地!」
店内から、梅が叫ぶ声が聞こえて来る。
大地は構わず私を抱いたまま走り、紺野君の本に顔を近づけた。
「?」
彼は本の匂いを嗅ぐとまたドラゴンに変身し、私を背中に乗せて羽ばたいた。
再び、空の上。
風が穏やかになったので、彼の話す声はきちんと、こちらに伝わって来た。
「…お前は俺が怖いか?」
「…ううん」
「…ごめんな。急に血を吸ったりして」
「…うん」
あれは、びっくりしたけど!
私は、大地の素性をまるで知らない。
毎年、神社の夏祭りの時にだけ現れる大地が今までどこに住んでいて、どうやって生活していたのか知らなかった。
「あなたは、普段どこにいるの?」
「人間は『竜宮城』って呼ぶかもな。…帰るのが怖い」
私は2階にある自分の部屋から、紺野君に借りていた本を持って来た。
カフェに戻ると梅ばあちゃんが、大地に向かって再び怒鳴り声を上げていた。
「世界中に伝染病が広がった今、人間達はただでさえ恐怖に怯え、迷い、助けを求めています。我々がここにいるべきではありません」
「…俺は病原菌か」
「いいえ。でもドラゴンは、人を怖がらせます」
「…」
私と目が合った大地はこちらへ近づき、私を突然抱き上げて、店の外へと飛び出した。
「…!!」
お姫様だっこ!
「待ちなさい大地!」
店内から、梅が叫ぶ声が聞こえて来る。
大地は構わず私を抱いたまま走り、紺野君の本に顔を近づけた。
「?」
彼は本の匂いを嗅ぐとまたドラゴンに変身し、私を背中に乗せて羽ばたいた。
再び、空の上。
風が穏やかになったので、彼の話す声はきちんと、こちらに伝わって来た。
「…お前は俺が怖いか?」
「…ううん」
「…ごめんな。急に血を吸ったりして」
「…うん」
あれは、びっくりしたけど!
私は、大地の素性をまるで知らない。
毎年、神社の夏祭りの時にだけ現れる大地が今までどこに住んでいて、どうやって生活していたのか知らなかった。
「あなたは、普段どこにいるの?」
「人間は『竜宮城』って呼ぶかもな。…帰るのが怖い」