ドラゴン・ノスタルジア
「ドラゴンは、どのくらい生きるんだ?」

 父の問いに大地は答え、

「種類によっては何百年も生きられますが、俺はハーフだから。人間と同じくらいの寿命しか無いと言われました」

 続けてこう言った。

「さっき、さくらの血を貰ったのは、変身する力が足りなくて」

 父と母は驚いて箸を動かす手を止め、大地を見た。

「今なんて…?」

「血を、貰った…?」

「何でもない!」

 私は慌てて話を誤魔化した。

 温かい鍋をつつきながら、大地は話を続けた。

「俺は色々特殊だから、神々ともドラゴンとも違う場所に住み、別な仕事をしています」

 帰るのが怖い、『竜宮城』の事かな。

「どんな仕事?」

「ガッコウの先生。今は、…託児所」

「託児所?」

 …誰の?

 父は日本酒を飲みながら質問をした。

「大地、結婚したらさくらを君達の世界に連れて行くつもりか?」

 どきっとした。

「それとも君が人間になるのか?」

 結婚するには、そのどちらかの決断が必要だ。

「俺が人間になります」

「…あなたはそうしたいの?」

 母が聞くと、大地は頷いた。

「はい」

「でも人間になったら、あなたの力はどうなるの?」

「力は置いてきます。必要無いから」


 久遠様の言葉が


『神々は会議をしている』


 脳裏に蘇る。


『このまま見捨てるか、人間世界を存続させるかを』


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