ドラゴン・ノスタルジア
「ユヅ。明日さくらの誕生会と、俺たちの結婚式をやるんだ」

 大地がこう言うと、結月は目を丸くして私たちを見た。

「……は?」

 …話についていけないかも。
 いきなり結婚とか聞かされても。

「えっとね、色々これには事情があって…」

「……行きたい」

 ……!

「来たいよな?ユヅ。明後日引っ越しなんだろ?」

「式が明日なら絶対行く。…でも、集会は出来ないんじゃ…」

「大丈夫だ。明日の朝、この時間にここに集合な」

 結月は小さく頷いた。

「さくら、コンノやリョータ達に声かけてくれ」

「うん。わかった」

 結月は私を見て、晴れやかな表情で笑ってくれた。

「明日、さくらにお祝いを持ってくるね。…ついに完成したから」

「…何が?」

 結月は、唇に人差し指を当てた。

「明日のお楽しみ」






 翌朝。
 岩時神社の満開の桜の木の下、大地は両手を高く掲げた。

 凌太、りっちゃん、紺野君、結月、私は、それを黙って見守った。

「…駄目だ、開かない!」

 強い風が吹き、桜の花は小さな花びらを舞い上がらせた。

「ねえ…大地何やってんの?…さっきから」

 あたり一面、桜吹雪が広がっている。

「シー…黙って!凌太」

 結月の荷物にかかっていた布が風に吹かれて空に舞い上がり、凌太がそれをキャッチした。



 結月は一枚の、大きな絵を持っていた。



 
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