ドラゴン・ノスタルジア
 意地悪そうな女性と、彼女に似た少女が踊り場に突然姿を現した。

「…カシャ様、シキミ」

「大地先生。ここで結婚式を挙げると聞きましたが」

「はい」

 大地はカシャに向かって一礼した。

「人間の魅力を神や霊獣達に教えて下さった先生に、文句を言うのも何ですが」

「…」

「先生の努力は全て無駄です。ウイルスに侵された人間世界は、もうすぐ終わります」

 大地はカシャを睨みつけた。

「誰がそう決めたんですか?」

「おお、怖い!ずっとシキミをここに通わせたのに…こんな事なら別なガッコウにすれば良かったわ」

 カシャは大地を馬鹿にした様に笑った。

「神々が人間を見捨てるのは、時間の問題でしょうから」

「人間を侮辱するのは、やめて下さい!」

「臭いがする!…本物の人間がいるのですか?病原菌をここに持ち込まれては困るわ!」

 大地は鋭い視線でカシャを睨んだ。

「その言葉…恥ずかしくありませんか?神々に人間の病気はうつりません」

 怒ったセイランは青白い鳳凰に変身し、カシャに向かって強い炎を吐きかけた。

「やめろ!セイラン」

 大地に止められたセイランは、吐いた炎を一瞬で止めた。カシャは黒蛇に変身し、舌を出してセイランを威嚇した。


「…出て行って下さい!カシャ様」


 大地の言葉に、梅が続けてこう言った。


「ここは、あなたのいる場所ではありません」

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