ドラゴン・ノスタルジア
 螺旋階段をさらに登ると、先程より小さな広間に着いた。

 3歳から5歳くらいの子供達が20人ほど、椅子にちょこんと座りながら、透明な用紙に絵を描いている。


「大地」

 子供達と一緒にいた女性が、大地に声をかけた。

「母さん」

 母さんと呼ばれた綺麗な女性は、こちらを見て手を振った。彼女は子供たちの面倒を見ていたようだ。


 大地のお母さんは、私を見ると微笑んだ。


「あなたが、さくらさんね?」


「…はい」


「大地の母、弥生です」


「はじめまして」

 私は緊張しながら、弥生さんと握手をした。

「やっと、あなたに会えた」

 彼女は優しく私に微笑みかけ、

「大地をどうか、よろしくね。さくらさん」

 少し目に涙を浮かべている。

 …どうしてだろう。


「…はい」

 







 後ろで遊んでいた子供達が、絵の具を持って近づいて来た。

「色がたりない」

「うまくかけない」

 彼らは透明の用紙に、絵を描こうとしている。

 結月は2人に教えてあげた。

「この2つの色を混ぜたら?」

「…かわった!」

「もっとやってみる?」

「やりたい!」

 結月は絵の具を混ぜ合わせ、オレンジ、紫、緑、茶色などを作ってみせた。

「お姉ちゃんすごい!」

 2人は叫び声をあげて喜んでいる。

 結月の近くには、他の子供達も近寄ってきた。

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