ドラゴン・ノスタルジア
「素敵な笑顔……!ね、セイラン」

 レニが言うとセイランは真っ赤になり、慌てて後ろを向いてしまった。

 …………笑顔?

 生徒たちは、うっとりとした表情で私を見ている。

「…………??」


 その時、入り口の扉が音を立てて開き、人間の姿に戻った梅が大地と私だけを手招きした。

「上の階へどうぞ」


 小さな控室に入ると梅が私達に向かって、白い杖をくるっと振った。

「式の前に、正装していただきますね」

 大地は黄金の龍の紋章がついた袴に、大きな黒マント姿に変わった。

 私は桜色の花模様がついた美しい着物、足元まである段状のフリルスカート姿に変身した。

「私は皆を着替えさせ、この部屋にお二人のご両親を呼んできます」


 梅は再び、下の階へと降りて行った。


「どう?さくら」


 私は大地を見て、感動した。


「……すごく似合う!」


 花婿や
 王子様というよりも、


 大地は、困難を乗り越えて
 世界中でただ一人生き残った、
 孤高の勇者の様に見えた。



「ありがと」



「私はどう?大地」


 私が彼の真似をすると、


「…すごく可愛い」


 彼は照れた様子で、


「…抱きしめていいか?」


 聞いておきながら、顔が少し赤くなった。


「うん」


 大地は私を、愛おしそうに
 ぎゅっと強く抱きしめた。



「………嬉しい」


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