ドラゴン・ノスタルジア
祝福と妨害
 大地は私の髪に顔をうずめた。

「…花嫁衣裳を着たお前を見たら、みんなどうなっちゃうんだろうな」


「…………?」


 潤んだ瞳で私を見ながら、彼は小さくため息をついた。

「心の輝きが全部、俺達には見える。さくらのはまるで、桜色の宝石みたいに綺麗だから…」


 …私が、宝石?


「すごく甘くて、いい香りがするし…」

 彼は私の肩に手を乗せ、首筋に顔を近づけ、香りを嗅いだ。

「……血、吸っていいか…?今…少しだけ…」

 吐息が、首筋にかかる。


「…駄目」


「……じゃあ、式が終わってからなら、いい…?」


「……」



 コンコン。

 ノックの音。


「…はい」


 私が返事をすると、父と母が入って来た。


「綺麗ね、さくら…。おめでとう」

 母は私の手を取り、花嫁姿を嬉しそうに褒めてくれた。

「18年前、我々が君達を婚約させた事が…良かったのかどうかはまだ、わからない」

 父は、目に涙を浮かべながら続けた。

「だが、今日までさくらと一緒に過ごせた事には、本当に感謝の気持ちで一杯なんだ」


「お父さん」


 私まで、思わず涙が溢れて来る。


「大地。さくらをよろしく」


 大地は父の言葉に頷いた。


「はい。幸せにします」


 母は微笑み、大地の肩に手を乗せた。


「あなたも一緒に、幸せになってね」



「…はい」




< 41 / 60 >

この作品をシェア

pagetop