ドラゴン・ノスタルジア
 コンコン。ノックの音。

 ドアが開き、レニとシキミが入って来た。

「みんなからの贈り物です」

 レニは私に白やピンクの花でできた、可愛いブーケを差し出した。

「ありがとう…!」

 黒蛇カシャと一緒にいた時は、喋らなかったシキミ。人間の姿をして私を見つめ、今は何か言いたそうにしている。

 私は彼女に話しかけた。

「『シキミ』って、白い花の名前なの。…これに似てる」

「……え?」

 ブーケの花のひとつを、私は指差した。

「素敵な名前ね。いい香りだし…」

 毒はあるけどその清らかな香りで、邪気を打ち消してくれる花。

「……あなたの方が素敵です」

 ……!

「ごめんなさい。…母があんなひどい事を言うなんて」


 シキミは悲しそうに一粒、涙を零した。


「……あなたが謝らなくていいよ、大丈夫。結婚式に出てくれる?シキミ」


「…………いいんですか?」


「もちろん!」


 シキミは、嬉しそうに笑ってくれた。


 大地は彼女に話しかけた。

「ここを、好きでいてくれたんだな」

 シキミは憧れの眼差しで大地を見た。

「大地先生、私は人間の世界に行ってみたいです」

 彼女は考え方が、母親とは全然違うんだ。


 私はシキミの手を握った。


「いつか私達の世界にある『シキミ』の花を、見に来てね」


 彼女は嬉しそうに頷き、私に微笑んでくれた。


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