ドラゴン・ノスタルジア
「親と子は、別なんだよな」

 大地と私以外の全員が部屋から出て行くと、彼は小さなため息をついた。

「俺は、シキミを絶対に諦めてはいけなかったんだ。もう二度と、あの子に人の姿では会えないと思ってたのに」

 彼は私の方へと歩み寄り、

「……お前には、教えられる事ばかりだな、さくら。お前のおかげであの子と話せた」

 私の肩に、そっと自分の手を乗せた。

「………」


「力が強いだけで、人間より愚かな神もたくさんいる。黒蛇カシャが、その代表だ」


 大地は私を、じっと見つめた。


「俺は、死ぬまでお前と一緒にいる」

 その目には、固い意思を宿していた。


「………大地」


「お互いにまだ、知らない事ばかりだけど。…ゆっくり俺に教えてくれよ、お前の事」


 私は笑って頷いた。


「私にも大地の事、たくさん教えてね。夏祭りの時しか話をした事、無かったし」


 彼は優しく、私の髪を撫でた。


「…うん」


 心臓が、どきんと鳴った。


「…赤くなった」


 真剣な眼差しで、じっと彼に見つめられている。


「……急に、私、大地と結婚するんだなって、思って…」


「今更?」


 彼は照れた様に笑いながら、

 
「俺は人間になって、早くお前と暮らしたい」


 私のおでこに、自分のおでこをくっつけた。



「…俺は人間を尊敬してるし、大好きだから」



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