ドラゴン・ノスタルジア
 光に満ちて明るかった場所が急激に闇に覆われ、暗くなってきた。

「…来たようだな」

 白いドラゴンの姿の久遠様が呟いた。

「ええ…音がします」

 梅は既に、黄金の鳳凰の姿に変身している。


 ゴゴゴゴゴゴ!!


 城が大きく、揺れ始めた。


「わっ!」


「何だ?…地震か?」


 凌太達は急いで椅子から立ち上がった。


「飛べないやつは、ドラゴンの背中に乗れ!」

 大地が叫んだ。


 大きな音を立てて、みるみるうちに城が崩れていく。


「…私の作った城…!」


 悲しそうな声で、梅が叫んだ。


「城はまた、作ればいい」

 久遠様が梅を諭した。


「早く背中に乗って!」

 凌太達と私の両親は海流と空蓮の背中に、私は大地の背中に乗った。

 弥生さんと小さな子供達は、久遠様の背中に乗っている。

「何が起こってるんだ?」

 凌太が聞くと、大地が苦々しい口調で答えた。

「人間嫌いの神々の仕業だ。世界を繋ぐ空間を塞ごうとしてる」


 セイランとレニは、先頭に立って私達を誘導している。


「人間の世界まで、送ります!」


 粉々になっていく城を空から見下ろすと、神殿の庭に誰かが立っていた。


「さくら、どうした?」


「あそこにシキミがいる!」


 最後に神殿が崩れ落ちる瞬間、シキミはこちらを見て微笑みながら、どこかへと消えていった。


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