ドラゴン・ノスタルジア
「じゃ、とりあえず」

　大地はベンチから立ち上がった。

「簡単な事から解決していく」

　彼は私に手を差し出した。

　私が首を傾げながらその手を取ると、

「ちょっとお前の力、ちょうだい？」

　彼は私をぐっと引き寄せた。

　首筋に顔を近づけられ、
　一瞬、ぞくっとしてしまう。

「……な…」

　口を開けた彼の
　その妖艶な瞳が、
　獣の様な鋭さを見せた。

　何するの？！

　彼は私の首筋に突然、噛みついた。

「……！！」


　くすぐったいだけ。

　だけど、

　とても熱い様な、
　氷みたいに冷たい様な、
　はじめての感覚が
　全身を駆け巡った。


「…うわ…」


　大地は小さく吐息を漏らした。


「…お前の血、すごい…」


　大地は
　私の首筋から口を離すと、


「いい味…」


　と言って目を潤ませ、
　こちらを見ながら、
　その顔を赤くした。


「…ち…ちょっと大地…！」


　私は恥ずかしくなり、じたばたと暴れながら慌てて体を引き剥がした。


「ごちそうさま」


　大地は満足した様子で
　美しく微笑んだ。


「今…私の血を吸った…？」


「うん」


「あなたは…吸血鬼？」


「…まあ、その先祖か」


「…！」


「…心配すんな。俺はお前の血しか吸わない」


「…？！」


「俺の嫁になれるのは、お前だけだから」



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