ドラゴン・ノスタルジア
「……?!」


 何から何まで、理解不能!!!


 ショックが大きくて、言葉が出ない。





 彼は空を見上げた。




 目を瞑って、何かの合図の様な奇妙な言葉を口にしたかと思うと、口笛より高い音が空から響いてきた。


 真昼の空高くからピンクと薄緑色の光が降り注ぎ、彼の体に幾重にも纏いつく。



 みるみるうちに、大地の体は桃色の
 大きなドラゴンに変身していた。


「乗れ、さくら」


 ドラゴンが喋った!


「俺の背中に乗れって言ってんの」


「…どうやって?!」


 小さなため息が聞こえた。


「あーもう!めんどくせえ!」


 ドラゴンはいきなり私の体にその頭をぐるんと巻きつけた。

 私の体は一瞬でひっくり返り、あっという間にその背中に乗せられた。


「とりあえず、お前んち行くぞ!」


 ドラゴンはその大きな両翼を広げ、急速な勢いで空に向かって羽ばたいた。

「わっ!わわわっ!!!」

 私は慌ててドラゴンの首に巻きついている、シルバーの鎖を両手で掴んだ。

「しっかり掴まってろよ!」

ドラゴンの背中からは大地と同じ、雨上がりの草木の香り。そのピンク色の肌はビロードの生地の様になめらかで、想像とは正反対だ。


「ねえ…本当に大地なの?」

 ぷっ、と吹き出す声がした。

「そうだよ」

 …やっぱり大地は、人間じゃ無かったんだ…!
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