ドラゴン・ノスタルジア
 痛いくらいに冷たい空気。
 凄まじい轟音と、頬を切る様な風。

「ちゃんと捕まってるか?!」

 私、夢でも見ているのかな?!

「……なんとか!!」

 少し大きな声を出さないと、大地には伝わらない。

 これ、絶対現実じゃ無いよね?!大地が大きなドラゴンに変身し、私を背中に乗せて飛んでいるなんて!

「お前を乗せると、背中があったかいんだな」

 おそるおそる下を眺めると、神社から続く参道が細く伸びており、家や建物が小さなオモチャの様に見える。

「なんか、意外と気持ちいいかも」

 大地は感心した様子で呟いた。

「…ねえ大地、これ現実?!」

 彼はまた笑った。

「夢だと思う?ならもう一回、血を吸ってやろうか?」

 そうだ、突然血を吸われたんだ!

 ……わけがわからない!

「『俺の嫁』ってさっきの…あれ、どういう意味?」

「さくらが俺の、婚約者だって意味」

「……は?」

「お前は親同士が決めた、俺の許嫁だから」

 うそ!

 聞いてない!私。

「やっぱり知らなかったのか?」

「……知らないよ!」

「俺は知ってた。6歳の頃からずっと」

 6歳って事は、はじめて夏祭りで会った時だ。

「そんな大事な事、どうして…」

 今までどうして言わなかったの?

「まずはお前と、友達になりたかったから」

 大地の艶のある声は、真剣な響きを含んでいた。
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