ドラゴン・ノスタルジア
その時。
店のドアが派手な音を立てて開き、真っ赤な顔をして怒った梅ばあちゃんと、母・露木桃が入って来た。
「大地!」
濃紺の着物の袖を白い紐で括り付けたまま、梅は息を切らせて大地を睨みつけている。
「…いつの間に…本殿から…抜け出したのです…こんな所にいるとは!」
「…梅!」
「こんな所とは何です」
父は呟き、口を尖らせた。
優しく肩をさすってから母は懸命に梅をなだめ、
「外で偶然梅さんに会ったんだけど…どうしちゃったの?こんなに怒るなんて」
店のエプロンに着替えつつ、心配そうに彼女を見つめた。
梅は母の言葉に返事をせず、さらに大地に怒号を発した。
「久遠様が怒っています!勝手に神社から抜け出すとは!」
「…気づくの早え」
梅は、大きなため息をついた大地の腕を荒々しく掴んだ。
「帰って下さい、大地。あちらの世界に」
「ちょっと待て、梅」
「人間が今、どんな状況なのか知っているのですか?」
「コロナとかいう伝染病が流行ってんだろ?さくらに聞いた」
「聞いたのなら、帰ってちゃんと仕事をしてもらわないと。…私のかわりに」
「…うるせえババアだ」
「なんですと?!」
大地は私を手招きした。
「さくら、ちょっと」
私が頷いて大地に近づくと、彼は私に小さく耳打ちをした。
「コンノに返す本を、今すぐ持って来い」
店のドアが派手な音を立てて開き、真っ赤な顔をして怒った梅ばあちゃんと、母・露木桃が入って来た。
「大地!」
濃紺の着物の袖を白い紐で括り付けたまま、梅は息を切らせて大地を睨みつけている。
「…いつの間に…本殿から…抜け出したのです…こんな所にいるとは!」
「…梅!」
「こんな所とは何です」
父は呟き、口を尖らせた。
優しく肩をさすってから母は懸命に梅をなだめ、
「外で偶然梅さんに会ったんだけど…どうしちゃったの?こんなに怒るなんて」
店のエプロンに着替えつつ、心配そうに彼女を見つめた。
梅は母の言葉に返事をせず、さらに大地に怒号を発した。
「久遠様が怒っています!勝手に神社から抜け出すとは!」
「…気づくの早え」
梅は、大きなため息をついた大地の腕を荒々しく掴んだ。
「帰って下さい、大地。あちらの世界に」
「ちょっと待て、梅」
「人間が今、どんな状況なのか知っているのですか?」
「コロナとかいう伝染病が流行ってんだろ?さくらに聞いた」
「聞いたのなら、帰ってちゃんと仕事をしてもらわないと。…私のかわりに」
「…うるせえババアだ」
「なんですと?!」
大地は私を手招きした。
「さくら、ちょっと」
私が頷いて大地に近づくと、彼は私に小さく耳打ちをした。
「コンノに返す本を、今すぐ持って来い」