消えたい俺と犬
俺は、美術室の窓から外を見つめていた。別の家で暮らしてるけど、学校は変わってないよ。ちなみに、今、俺は中学1年生。
「おい」
声をかけられて、俺は顔を上げる。声をかけてきたのは、同じ美術部の先輩。
「帰らなくて良いの?1年生、全員帰って行ったよ?」
俺は、時計に目を移した。まだ、部活が終わる時間じゃないな。
「俺は、まだいます。ギリギリまで、絵を描きたいんですよ」
俺は、机に置いておいたシャーペンを手に取って、手を動かす。
「そっか。何描いてんの?」
「俺の家で飼ってる犬が、擬人化したらこうなるかなっていう妄想を描いてます」
「へぇ……お前ん家、犬飼ってるんだ。俺ん家も飼ってるよ。犬種は?」
「ボーダー・コリーです」
「ボーダー・コリーか……犬の中で、一番賢いとされてる犬だね。俺のとこは、柴犬だよ。名前は?」
「……ベーコン」
俺が答えると、先輩は「は?」と驚いた顔を見せた。
「ベーコンです。俺が、名付けたわけでは無いんですけど……実は義理の妹が付けたみたいです。義理の母が言うには、最初、義理の妹は、ベーコンじゃなくて、ハムチーズって名前を考えていたらしいですよ」
「は、ハムチーズ……」