好きな子を守れなかった代償

学校へ行くのが憂鬱な人はどこかに必ずいるだろう。高校三年生の寺本航（てらもとこう）もその一人だ。

「……卒業まであと三ヶ月もあるのか……」

ベッドから起き上がり、航はカレンダーを見てため息をつく。冬休みが終わり、今日からまたしばらく学校だ。

朝ご飯を食べ、もうすぐで着なくなる制服に着替える。学校へ行くと思うとやはりため息しか出てこない。

もう卒業後の進路も決まり、自動車学校も卒業した。しかし、卒業までのんびりできる喜びなどはない。それは、航のクラスに問題があるからだ。

航の家から自転車で三十分のところに高校はある。教室に向かうだけで、航の足は重くなった。

「おはよう」

航は微笑みを作り、教室の友達に話しかける。友達も何もないように「おはよう」と返してくれた。しかし、やはりその笑顔はぎこちない。

黒板には、ある一人の生徒の悪口が一面に書かれている。さらに四月に撮った集合写真が貼られ、その生徒の顔の部分だけ黒く塗り潰されていた。