俺様天然男子
名残惜しくバイバイして、家に入るとお母さんがお風呂から出て来た。



「長かったのね、バイト」

「ううん、デートしてきた」

「彼氏?」

「うん」

「私みたいになっちゃダメよ?」

「お母さんみたいに…?」

「悪い男にひっかかる」

「悪い男じゃないよ?性格、すごく優しいの」

「まぁ、由乃が好きになった人なら、私は信じてるけど。それでね…あのね?」



言いにくそう…。



何かあったのかな…。



「今お付き合いしてる人が、由乃に会いたいって言うのよ」

「えっ、それって…再婚考えてるってこと?」

「プロポーズはされたけど…。由乃もほら、いろいろわかる歳になったじゃない?」

「お母さんはどう思ってるの?」



お母さんは、あたしを19歳で産んだ。



未婚ではなく、バツイチ。



父の記憶はなく、母が言うには…父はカタギの人間じゃなく、そっちの筋の人だったのだと。



父の浮気に耐えられずに、別れたと聞いたことがある。



若かった母が、あたしを必死で育ててくれて、今のお店も死に物狂いで手に入れた物だと知っている。



苦労人のお母さんが幸せになるなら、あたしは反対するつもりはないよ。



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