俺様天然男子
幼稚園の頃、俺の取り合いになったことがあった。



『理音くんはあたしの‼︎』

『昨日一緒に遊んだでしょ‼︎今日はあたしと遊ぶの‼︎』



そんなやりとりが日を追うごとに激しくなって。



どうして俺と遊びたいのかと聞いた。



『理音くん、王子様みたいなお顔なんだもん』



そう言われて、よくわからないまま傷ついた。



朝から待ち構える女の子たちの俺の奪い合い。



ケンカにまで発展して、ケガをする子が続出してしまった。



『理音くんは悪くないんだけどねぇ…』と言ってくれた先生だったけど、毎日の流血事件に日々苦労させられていたのを、子どもながらに感じてしまって。



『幼稚園、やめる…』



自分がいたら迷惑がかかると、しばらく幼稚園に行くのを泣いて嫌がった。



そこから、俺は誰とも目を合わせなくなって、高校生になっても、それは変わらずに俺のトラウマとなった。



顔がいけない、そう思っていたのに。



その顔が、今なら役に立つようだ。



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