俺様天然男子
制服のまま、カバンをその辺に放り投げ、ブレザーを脱いだ。



ポケットで震えたスマホ。



『どうしたの?大丈夫?』



由乃からのメッセージを、初めて無視した。



ヘッドホンに、大音量の音楽。



マイクに向かって…叫ぶ。



何にも当れない。



誰にも当たっちゃいけない。



治れ、イライラ。



歌って、歌って、ずっと歌って。



最近みんなでお金を出し合って買った小さな冷蔵庫から、水を出して飲む。



また歌う。



音程とか、うまく歌うとか、そういうの、今はどうだってよくて。



ぐちゃぐちゃの腹の中の黒いものを、とにかく全部吐き出したかった。




息が切れて、汗をかいていることに気がついて。



空になったペットボトル。



冷蔵庫の前にしゃがみ込み、座ったまま少しボーッとして。



パソコン向かい、曲を作り始めた。



耳には大きな音。



お願いだから、早く…この苛立ちを消して。



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