俺様天然男子
実家を出て、買い物してから荷ほどき中の由乃の元へ帰った。



「ごめんね、ご挨拶もしないで…」

「それはべつにいいんだけど…」

「あっ、買い物してくれてありがとう‼︎あたし、作ろうか?」

「ううん、俺が作るよ。疲れてるでしょ?」



なにも気にしてないフリをして、買い物してきた夕食の食材を冷蔵庫に入れる。



俺の顔が知られたのなんて、今始まったことじゃないよ?



確かに、リトルヘブン時代のファンにも顔はバレているけど、去年にはもう、顔出ししてるのに。



ソファーに座ると、片付けが終わった由乃が隣に座り、控えめに腕にしがみ付いてきた。



可愛い…。



「お、怒ってる…?」

「どうしてそう思うの?」

「雰囲気が…」

「怒ってないよ」

「ちゅー…してないし…」

「あぁ…忘れてた…」



キス…したいんだけど…。



こんな気持ちでするの?



もう少しで触れそうな唇。



ダメだ。



モヤモヤする。



「やっぱり…怒ってるよ」

「えっ…」

「ごめん。今一緒にいると、由乃に怒っちゃいそうだからそっちの部屋行くね」

「理音くん…」



できなかった…。





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