俺様天然男子
溢れるのは涙と伝わらない思い。



あたしの中の理音くんの割合は、思っていたよりも大きかったようだ。



人ってこんなに泣けるんだね…。



もう、辛すぎて全てから逃げたい。



仕事からも、理音くんからも。



一回、時間をおいた方がいいの?



悩んでいても、時間は勝手に過ぎていく。



地元に戻って、久しぶりに帰ってきた実家のマンション。



「由嬉ー‼︎会いたかったよぉ‼︎」



自分のマンションには帰れなくて、実家に立ち寄った。



可愛く成長している由嬉をギューっと抱きしめる。



「どうしたの?珍しい」

「うん、ちょっと…ね?」

「お茶飲む?」

「うん、ありがとう」



由嬉と戯れながら、お母さんと話すのは、やっぱり仕事のこと。



移動が決まったこと…。



「理音くんはなんて?」

「どうかなぁ…。別れる、かも…」

「由乃はそれでいいの?」

「よくないっから…。どうしたらいいか…わかんなくてっ…」

「自分で決めたことなんでしょ?それを理音くんに委ねるのは、間違ってる。別れるなら、由乃から別れなさい」

「えっ…」

「その覚悟がないなら、仕事なんかやめてしまいなさい。どっちが大事か、ちゃんと考えればわかるんじゃないの?仕事で由乃の代わりはいくらでもいる。でも、理音くんにとって、由乃の代わりはいるの?」



お母さんの言葉は、今のあたしにはすごく厳しい言葉だった。



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