自販機から当たりが出た


帰り道、後ろから走ってくる音が聞こえた。


「せんぱーーーい!!!」


あの部活の後輩だ。


「これ!どうぞ!!!」


差し出された2本のジュース。

2本とも同じ種類のソーダだった。


「当たりが出たんです!先輩がいつも買ってる自販機!」


「おぉ!本当に当たるんだ」


驚きつつも、

彼女が当たったのなら嬉しい、
と思った。


「私、さっき、たまたま当たっちゃって。
先輩が当たりを見たい、って言ってたから。
せめて、当たったジュースだけでも…って」



ジュースを2本、差し出した手は
少し震えているように見えた。



「ありがとう。
一本だけくれるかな?一緒に飲もう」


「はい!」


目が輝いている。


当たりが出たのが、
よっぽど嬉しかったのだろう。



すぐ近くの公園で飲もう、
ということになり、一緒に歩き出す。


「私、先輩がいないと寂しいです」


「えっ?…あ、ありがとう。
まぁでも、僕と違って、
君は友達が多いから大丈夫だよ」


「ちがっ…そうじゃなくて…」



そこから彼女は、何か考えこんでしまった。







「あ、公園についたよ」

無言に耐えきれなくなって、
彼女に声をかける。





「先輩、好きです」






ん?





突然の出来事に固まる。





「…私、ソーダが好きです」





あぁ、なるほど。


あやうく、勘違いするところだった。


「分かる。僕も好き」


勘違いをしたせいで、
心臓が鳴り止まなかった。




二人でソーダを開けると、勢いよく飛び散った。


どうやら彼女が
僕を追いかけているときに、
ソーダがよく振られていたらしい。


慌てる彼女に笑ってしまう。




あの自販機は、高校生活の最後に
僕に当たりを見せてくれた。

              【END】
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