悪役令嬢はラスボスの密偵として学食で働くことになりました
差し入れ作成
ドローナを仲間に引き込めたおかげでいくらか落ち着いてリシャールの顔を見られるようになったカルミアである。しかし今後の方針についてどうしたものかと悩んでいると、いつの間にか寮までたどり着いていた。
寮の前には見慣れた人の姿がある。
「オランヌ?」
カルミアが呼びかけるとオランヌは嬉しそうに手を上げる。彼もここの住人だ。ちょうど帰宅したところだろうか。
「ああ、良かった! カルミアってば部屋にいないんだもの。会えなかったらどうしようかと思ったわ。ちょっとあたしの部屋まで付き合ってくれない? お願い、助けて!」
「はい?」
わけがわからないまま連行され、彼が部屋の扉を開くとリンゴの香りが広がった。
オランヌ越しに見えるのは木箱に詰まった大量のリンゴだ。
「市場に行ったらね。当たっちゃったのよ」
「これは……大当たりですね」
「そうそう、そうなの……って一人で食べるには限界があるでしょう!?」
それはそうだろう。背後に見えるリンゴは店の在庫ほどある。
「あたしを助けると思って半分ほど引き取ってもらえない?」
「喜んで」
「いいの!?」
「もちろん。リンゴは好きだし、料理にも使えるんですよ。そのまま食べても美味しいけど、お菓子はもちろんサラダにしたり、ジャムにするのもいいかな」
「ジャム! それはいい考えね」
「良かったらオランヌも食べる?」
「本当!?」
「たくさんあるし、もとはオランヌのリンゴじゃない。出来たら部屋に持って行くわ」
「ありがとう! ジャムか……ヨーグルトに入れても美味しそうだし、パンも買っておいて良かった!」
そこまで喜んでもらえるのなら作り甲斐があるというものだ。
(リンゴはたくさんあるし、リシャールさんにも持っていこうかな)
また美味しいと言ってくれるだろうか。
無意識のうちに期待が膨らんでいた。いつだってリシャールの喜ぶ顔はカルミアを励ましてくれる。また見たいと、いつしかそう願うようになっていた。
(会いに行くってことは、進展していない仕事のほうも報告しないとなんだけどね……)
そちらについては憂鬱なカルミアである。
寮の前には見慣れた人の姿がある。
「オランヌ?」
カルミアが呼びかけるとオランヌは嬉しそうに手を上げる。彼もここの住人だ。ちょうど帰宅したところだろうか。
「ああ、良かった! カルミアってば部屋にいないんだもの。会えなかったらどうしようかと思ったわ。ちょっとあたしの部屋まで付き合ってくれない? お願い、助けて!」
「はい?」
わけがわからないまま連行され、彼が部屋の扉を開くとリンゴの香りが広がった。
オランヌ越しに見えるのは木箱に詰まった大量のリンゴだ。
「市場に行ったらね。当たっちゃったのよ」
「これは……大当たりですね」
「そうそう、そうなの……って一人で食べるには限界があるでしょう!?」
それはそうだろう。背後に見えるリンゴは店の在庫ほどある。
「あたしを助けると思って半分ほど引き取ってもらえない?」
「喜んで」
「いいの!?」
「もちろん。リンゴは好きだし、料理にも使えるんですよ。そのまま食べても美味しいけど、お菓子はもちろんサラダにしたり、ジャムにするのもいいかな」
「ジャム! それはいい考えね」
「良かったらオランヌも食べる?」
「本当!?」
「たくさんあるし、もとはオランヌのリンゴじゃない。出来たら部屋に持って行くわ」
「ありがとう! ジャムか……ヨーグルトに入れても美味しそうだし、パンも買っておいて良かった!」
そこまで喜んでもらえるのなら作り甲斐があるというものだ。
(リンゴはたくさんあるし、リシャールさんにも持っていこうかな)
また美味しいと言ってくれるだろうか。
無意識のうちに期待が膨らんでいた。いつだってリシャールの喜ぶ顔はカルミアを励ましてくれる。また見たいと、いつしかそう願うようになっていた。
(会いに行くってことは、進展していない仕事のほうも報告しないとなんだけどね……)
そちらについては憂鬱なカルミアである。