悪役令嬢はラスボスの密偵として学食で働くことになりました
 カルミアはなんとか理由をこじ付け、無事一人で食堂を抜け出すことに成功する。

(ごめんね、みんな。私、学食で働く以前にリシャールさんの密偵でもあるの!)

 学外はリデロたちに任せているが、学園の内情は現場にいるカルミアが調べる方が効率的だ。

(今日は誰に話を聞く? でもまずは角度を変えて、犯人目線で物事を考えてみようかしら)

 犯人が見つからないのなら、その手段について想像してみよう。これも何かの糸口になるかもしれない。

(リシャールさんは学園を乗っ取ろうとしている人物がいることしかわからないと言っていた。もしも私が学園を乗っ取るのなら……やっぱり校長の座を狙うわよね。校長が変わるとしたら、それは何らかの理由で職務遂行が難しくなった時。あるいは本人の意思によるか……)

 リシャールの場合、前校長が高齢により職務の遂行が難しくなったことで校長に任命されたとゲームでも説明されていた。

(あるいはリシャールさんを亡き者にするとか……って無理無理! なんと言ってもラスボスなんだから、並大抵の魔法使いが勝てる相手じゃないわ。主人公(わたし)だってレベルが足りないと問答無用で返り討ちにされるのよ)

 何度セーブデータを読み込んだだろう。レベル上げを怠ってはならないというのはこのゲームの鉄則だ。

(あとは、力でねじ伏せる?)

 想像してみるも、相手が実力行使で学園を手に入れようとしたところで結局リシャールをどうにかする必要があるだろう。
 こんなところでもラスボスを発揮しているリシャールは、さすがアレクシーネの校長というべきか。

 校内を歩いていると、外のベンチにレインの姿を見つけた。このところ縁があるのか、不思議と遭遇する機会が多いようだ。
 今度こそ驚かせてしまわないように、カルミアは前方からわざと派手な足音を立てながら近づく。
 カルミアの姿に気付いたレインは本を閉じ、諦めたようにその場で待ち構えていた。
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