悪役令嬢はラスボスの密偵として学食で働くことになりました
「あたしたち一緒に会議を乗り切った仲でしょう。そしてこの学園をより良くしていく仲間。そうよね?」

 オランヌはリシャールに問いかけている。この場において決定権を持つのはリシャールということだろう。

「その通りですよ。カルミアさん」

 どの口がとカルミアは思った。

(一度リシャールさんに釘を刺されたんですけど……)

 容疑者たちと親睦を深めに行くのは問題なのではと思うカルミアであった。


 するといつまでも迷うカルミアにオランヌが内緒話をもちかける。

「この人、カルミアがこないと行かないっていうのよ! ただでさえリシャールは飲み会を断る常習犯なの。それがカルミアがいるなら来るっていうのよ。いい? これ凄い事。みんなびっくりしてるんだから! ね、お願い。あたしたちを助けると思って一緒に来て!?」

 必死に拝まれると、次第に断るのが申し訳なくなってくる。そういうことならと了承するが、そもそも何故自分がいなければリシャールは参加しないなどと言い出したのか……。

(はっ! そういうこと……。わかりました、リシャールさん。貴方の狙いが。つまり教師たちを酔わせて本音を引き出せということですね!)

 情報を得るのなら酒の席でということだ。
 リシャールはまるでそうだと言わんばかりに微笑んでいる。
 カルミアはリシャールに向けて一つ頷いて見せた。すると彼もまた頷き返してくれたので、つまりはそういうことなのだろう。

 会場は学園からほど近い街のレストランで、一度解散してから集合することとなった。
 レストランに到着すると会場の準備は整っており、立食形式のパーティーという本格的なものだった。
 再び教師たちが集まれば、リシャールの乾杯から懇親会は始まった。

「カルミア楽しんでる~?」

 声を掛けてきたのはオランヌだ。彼の頬はほんのり赤く染まっている。

「はい。ご一緒出来て嬉しいです」
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