悪役令嬢はラスボスの密偵として学食で働くことになりました
(でも校長の後釜といえば……ゲームではリシャールさんが消えた後、校長に就任するのはオランヌなのよね)

 オランヌルートのエンディングでは、混乱する学園をまとめ上げる彼の姿を見ることが出来る。
 
(てことは、あそこで無理やり肩を組まされている二人って……)

 遠くから見てもわかるほど呆れるリシャールと、それに負けじと絡んで行くオランヌの図は、ある未来では地位を追う者、追われる者となるわけだ。

(とてもそうは見えないのに)

 悪く言えば酔っ払いに絡まれて迷惑している人。良く言えば仲の良い飲み友達だろう。

(ゲームでのオランヌは校長になりたかったわけじゃない。仕方なく、それでも頑張るしかないといった風だったわ。だからオランヌがリシャールさんの地位を狙っているとは考えにくいのよね)

 残されたオランヌは周囲の期待に応えるしかなくなった。それを支えるのが主人公というわけだ。

 いよいよお開きになるが、ほとんどの者は二次会へと向かうらしい。
 オランヌはとことん付き合うようだが、カルミアはここで遠慮させてもらうことにする。そう告げたところ、オランヌも今度はすんなりと見逃してくれた。

「あらそう? じゃあ、リシャール。もう夜も遅いし、お姫様のこと送ってあげてね」

「貴方に言われるまでもありません。連れて来たのは私です、最初からそのつもりでいましたよ。挨拶をしてきますので、少しだけ待っていてくれますか?」

 断りを入れたリシャールが離れていく。するとその隙を狙ってオランヌが悪戯っぽく囁いた。

「リシャールの事、よろしくね」

 そう告げたオランヌはにこやかに手を振っていた。

 カルミアは二次会へ向かう教師たちをリシャールとともに見送る。ほとんどの教師が二次会へと繰り出すことから、仲の良い職場であることが感じられた。

「風が気持ちいいですね」

 寮を目指しながらカルミアが呟けばリシャールも同意する。夜風が心地良いと感じるほど、会場の熱気に当てられていたらしい。
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