悪役令嬢はラスボスの密偵として学食で働くことになりました
翌朝カルミアはオランヌに言われた通り、リシャールのために早起きをして弁当を作る。オランヌに言われたからと逃げるような言い訳をしているが、リシャールのために作りたいというのは偽りのない気持ちだ。
ところが食堂の前までやって来たカルミアは不意に足を止める。
石段を登り扉の前まで慎重に進むと、そこには白い封筒が落ちていた。拾い上げると丁寧な文字で『カルミア・フェリーネ様』と書かれているが、差出人の名前はない。
「私宛て?」
封を開けると中には白い紙が一枚入れられている。
「この学園から出ていけ」
読み上げれば、実に簡潔な文面だ。
(ベルネさん?)
かつて同じことを言われた相手を思い浮かべるが、彼女であれば手紙などという回りくどい真似はせず直接言うだろう。
この人物は誰で、どういった目的があってカルミアを追い出したいのか。最初に思いついた可能性は、やはりリシャールの密偵というものだった。
(これはリシャールさんに相談した方がいいわね。リシャールさんを連れて来てくれるオランヌには感謝だわ)
しかし問題はこれだけでは終わらなかった。
厨房に向かえばベルネに出迎えられ、それに続いてドローナが出勤する。ところが最後にやってきたロシュは血相を変えて飛び込んだ。
「みなさん大変です! これ、見て下さい!」
ロシュが広げた学食のメニューには黒いインクで大きくバツが書かれている。まるで学食を否定するような行為だ。
「何よこれ! 酷いじゃない!」
憤るドローナを落ち着かせたカルミアは、ロシュに説明を求めた。戸惑っているのはカルミアも同じだが、まずは状況を確認しなければならない。
「掲示板の前を通った時に気付いたんです。誰がこんなことを……」
明るいロシュまでが落ち込むことで厨房には暗い空気が立ち込めていた。
(朝の手紙に、学食への攻撃的な態度。よほどこの人物は私を追い出したいのね。慎重に立ち回っていたつもりだけど、どこからか情報が漏れた?)
おそらくこの手紙の差出人はカルミアがいると困る人間で、そのため学食にも警告を示したのだろう。よほど探られて困る事があるとみえる。早くリシャールに相談したいと、カルミアは昼休みが終わるのを待ちわびていた。
ところが食堂の前までやって来たカルミアは不意に足を止める。
石段を登り扉の前まで慎重に進むと、そこには白い封筒が落ちていた。拾い上げると丁寧な文字で『カルミア・フェリーネ様』と書かれているが、差出人の名前はない。
「私宛て?」
封を開けると中には白い紙が一枚入れられている。
「この学園から出ていけ」
読み上げれば、実に簡潔な文面だ。
(ベルネさん?)
かつて同じことを言われた相手を思い浮かべるが、彼女であれば手紙などという回りくどい真似はせず直接言うだろう。
この人物は誰で、どういった目的があってカルミアを追い出したいのか。最初に思いついた可能性は、やはりリシャールの密偵というものだった。
(これはリシャールさんに相談した方がいいわね。リシャールさんを連れて来てくれるオランヌには感謝だわ)
しかし問題はこれだけでは終わらなかった。
厨房に向かえばベルネに出迎えられ、それに続いてドローナが出勤する。ところが最後にやってきたロシュは血相を変えて飛び込んだ。
「みなさん大変です! これ、見て下さい!」
ロシュが広げた学食のメニューには黒いインクで大きくバツが書かれている。まるで学食を否定するような行為だ。
「何よこれ! 酷いじゃない!」
憤るドローナを落ち着かせたカルミアは、ロシュに説明を求めた。戸惑っているのはカルミアも同じだが、まずは状況を確認しなければならない。
「掲示板の前を通った時に気付いたんです。誰がこんなことを……」
明るいロシュまでが落ち込むことで厨房には暗い空気が立ち込めていた。
(朝の手紙に、学食への攻撃的な態度。よほどこの人物は私を追い出したいのね。慎重に立ち回っていたつもりだけど、どこからか情報が漏れた?)
おそらくこの手紙の差出人はカルミアがいると困る人間で、そのため学食にも警告を示したのだろう。よほど探られて困る事があるとみえる。早くリシャールに相談したいと、カルミアは昼休みが終わるのを待ちわびていた。