悪役令嬢はラスボスの密偵として学食で働くことになりました
アレクシーネ王立魔法学園には魔法学園らしく隠された部屋が存在する。資格のある者が礼拝堂のアレクシーネ像に触れると、たちまち地下へと転移する仕組みだ。
礼拝堂に着いたカルミアは息苦しいほどの霧に顔を顰める。
霧は少し扉を開いけば少しずつ外へと溢れていく。それは長い時間をかけて力を蓄え、ようやく一匹の竜となるだろう。ゲームのオープニングで主人公を襲う竜は一匹だった。
けれど現実は、それとは比べ物にならない数の竜が群れを成している。扉は開ききっていると考えるべきだろう。
(特定の人物でなければ閉められないわりに、開けられる人物の幅が広いっていうのは考えものよね。そこのところは偉大な魔女でもご先祖様でも物申したいところだわ)
アレクシーネが封じた邪悪なものは同じ心をもつ人間を求め、自身の一部とみなす。だからこそゲームのリシャールは扉を開くことが出来た。
しかしカルミアの出会ったリシャールは悪とはかけ離れた存在だ。心から学園を想い、優しく仕事熱心な人だった。おそらくレインの薬で心変わりが起きなければ開けることは叶わなかっただろう。
(ゲームのオープニングで竜を放つのはリシャールさんの役目。だからきっとこの先にいるのは……)
いくら邪悪なものたちが呼び掛けようと、地下に向かうことが許されるのはアレクシーネに許可された人間だけだ。
判別を下すのはアレクシーネの力の残滓であり、それは魂の生まれ変わりである乙女ゲームの主人公や、学園を託された校長といった人物だ。
(そしてもう一人、可能性があるとすれば……)
初めて学園を訪れた時、確かにカルミアはアレクシーネの声を聞いていた。
それから礼拝堂を訪れた時、誰かに呼ばれた気がしたのだ。
(あの時はゲームのやりすぎから聞こえた幻聴かと思ったけど)
生まれ変わりではない。学園を託された者ではない。けれどカルミアにはアレクシーネとの繋がりがある。
礼拝堂に着いたカルミアは息苦しいほどの霧に顔を顰める。
霧は少し扉を開いけば少しずつ外へと溢れていく。それは長い時間をかけて力を蓄え、ようやく一匹の竜となるだろう。ゲームのオープニングで主人公を襲う竜は一匹だった。
けれど現実は、それとは比べ物にならない数の竜が群れを成している。扉は開ききっていると考えるべきだろう。
(特定の人物でなければ閉められないわりに、開けられる人物の幅が広いっていうのは考えものよね。そこのところは偉大な魔女でもご先祖様でも物申したいところだわ)
アレクシーネが封じた邪悪なものは同じ心をもつ人間を求め、自身の一部とみなす。だからこそゲームのリシャールは扉を開くことが出来た。
しかしカルミアの出会ったリシャールは悪とはかけ離れた存在だ。心から学園を想い、優しく仕事熱心な人だった。おそらくレインの薬で心変わりが起きなければ開けることは叶わなかっただろう。
(ゲームのオープニングで竜を放つのはリシャールさんの役目。だからきっとこの先にいるのは……)
いくら邪悪なものたちが呼び掛けようと、地下に向かうことが許されるのはアレクシーネに許可された人間だけだ。
判別を下すのはアレクシーネの力の残滓であり、それは魂の生まれ変わりである乙女ゲームの主人公や、学園を託された校長といった人物だ。
(そしてもう一人、可能性があるとすれば……)
初めて学園を訪れた時、確かにカルミアはアレクシーネの声を聞いていた。
それから礼拝堂を訪れた時、誰かに呼ばれた気がしたのだ。
(あの時はゲームのやりすぎから聞こえた幻聴かと思ったけど)
生まれ変わりではない。学園を託された者ではない。けれどカルミアにはアレクシーネとの繋がりがある。