悪役令嬢はラスボスの密偵として学食で働くことになりました
「本当ですか!? 正直に告白していいんですよ。口に合わなかったからといって乗船代をつり上げたりしませんから!」
リシャールはカルミアの必死さに苦笑していた。
「本当に美味しいですよ。初めて食べる料理ですが、スパイスの香りが刺激的で癖になりますね。こちらのカレーだけを食べても美味しいですが、やはり炊き立ての米と一緒に呑みこんだ時の感動は比べ物になりません」
丁寧な感想を聞かされたカルミアはようやく安心して元の席に着くことが出来た。
「そんなに緊張されていたのですか?」
「昔、無理をして美味しいと言わせてしまった人がいるんです。それで、心配になってしまって」
「カルミアさんの料理をですか? 私には美味しいとしか思えませんが」
「まだ幼かった頃の話ですが、あの頃は今ほどなんでも出来たわけではありません。包丁も上手く握れずに、野菜の切り方はいびつで。火加減もまばら、焦がしてばかりいました。誰かさんからは美味しくないと素直に言われていたんです」
カルミアが視線を向けるとリデロはそっと逃げていった。
「でもその人だけは、美味しいと言ってくれたんです」
それはカルミアにとって、大切な思い出として深く心に残っている。
「年上の男の子で、名前は知りません。会えたのは一度きりで、どこの誰かもわからないんです。けど、励まされました。誰かに美味しいと言ってもらえることの喜びは、あの人が教えてくれたんです」
「そうでしたか。ですが話を聞いた限りでは、その方も本当に美味しいと感じていたのでは?」
「だといいんですけど、後で私も同じものを食べたんです。野菜の切り方は大小ばらばらで、小さな物は黒焦げ。大きな物は生煮えで、おまけに油の使い過ぎでべとべと。幼かったとはいえ、それはもう酷い出来でした。本当にあの時の人に申し訳なくて!」
カルミアはぐっとスプーンを握りしめた。
「お嬢ってば、それでも料理するって聞かないですからねー。俺ってば、何度黒こげの物体を食わされたことか」
「この通り、リデロなんて文句ばかりです。それなのに文句も言わずに食べてくれて、励まされたような気がしました。いつかその人にも成長した私の料理を食べてもらいたい。そのためにも料理の腕を磨いているというわけです」
「素敵なお話ですね」
「え?」
「夢が叶うといいですね」
リシャールはカルミアの必死さに苦笑していた。
「本当に美味しいですよ。初めて食べる料理ですが、スパイスの香りが刺激的で癖になりますね。こちらのカレーだけを食べても美味しいですが、やはり炊き立ての米と一緒に呑みこんだ時の感動は比べ物になりません」
丁寧な感想を聞かされたカルミアはようやく安心して元の席に着くことが出来た。
「そんなに緊張されていたのですか?」
「昔、無理をして美味しいと言わせてしまった人がいるんです。それで、心配になってしまって」
「カルミアさんの料理をですか? 私には美味しいとしか思えませんが」
「まだ幼かった頃の話ですが、あの頃は今ほどなんでも出来たわけではありません。包丁も上手く握れずに、野菜の切り方はいびつで。火加減もまばら、焦がしてばかりいました。誰かさんからは美味しくないと素直に言われていたんです」
カルミアが視線を向けるとリデロはそっと逃げていった。
「でもその人だけは、美味しいと言ってくれたんです」
それはカルミアにとって、大切な思い出として深く心に残っている。
「年上の男の子で、名前は知りません。会えたのは一度きりで、どこの誰かもわからないんです。けど、励まされました。誰かに美味しいと言ってもらえることの喜びは、あの人が教えてくれたんです」
「そうでしたか。ですが話を聞いた限りでは、その方も本当に美味しいと感じていたのでは?」
「だといいんですけど、後で私も同じものを食べたんです。野菜の切り方は大小ばらばらで、小さな物は黒焦げ。大きな物は生煮えで、おまけに油の使い過ぎでべとべと。幼かったとはいえ、それはもう酷い出来でした。本当にあの時の人に申し訳なくて!」
カルミアはぐっとスプーンを握りしめた。
「お嬢ってば、それでも料理するって聞かないですからねー。俺ってば、何度黒こげの物体を食わされたことか」
「この通り、リデロなんて文句ばかりです。それなのに文句も言わずに食べてくれて、励まされたような気がしました。いつかその人にも成長した私の料理を食べてもらいたい。そのためにも料理の腕を磨いているというわけです」
「素敵なお話ですね」
「え?」
「夢が叶うといいですね」