悪役令嬢はラスボスの密偵として学食で働くことになりました
「私はベルネさんの料理を食べさせていただいたので、ベルネさんにも食べてもらわないと!」

 抵抗していたベルネも好奇心に負けたのか、次第に口を閉ざしていった。カレーに抱いた興味からは抗えないようだ。
 カルミアは三人分のカレーを手にしてフロアに向かう。カルミアの姿が消えるまで、ベルネは一歩も動こうとはせず、葛藤しているようだった。

「お待たせしました」

「この香りは、カレーですか?」

 すっかりカレーの虜となっていたリシャールはいち早く気付いたようだ。

「カレーってなんですか? なんだか凄く良い匂いがするんですけど!」

 ロシュは興奮気味に席を立ち、運ぶのを手伝ってくれる。
 料理が並ぶと三人はすぐに食べ始めた。

「え、これっ……凄い、凄いですよカルミアさん! 僕、こんな料理初めて食べました。なのに凄く美味しいです!」

「ロシュの言う通りだ! 今まで食べたどんな料理とも違う。だが手が止まらない!」

「喜んでもらえて良かった。私の料理は美味しいと思ってもらえたのよね?」

「もちろん! いくらでも食べたいくらいだ!」

「ありがとう。オズ」

「僕もです!」

「ロシュもありがとう。校長先生はいかがです?」

「私の感想はあの日から変わっていませんよ。また食べることが叶って嬉しいですね」

「ありがとうございます。では私は少し席を外しますので、みなさまごゆっくり召し上がって下さいね。申し訳ないけど、ロシュは急いでもらえると助かるわ」

「わかりました! でもどうしてですか?」

「これから忙しくなるからよ。ここは任せるから、お客様がいらしたらよろしくね」

「お客様?」

 そんな人たちがどこにいるのだろう。ロシュは入り口を振り返るが、開け放たれた扉から覗く人影はない。


 オズたちが残りのカレーを堪能している頃、カルミアはベルネと対峙していた。
 決着をつけよう。互いの眼差しにはそんな思いが込められている。

「ベルネさん。おわかりいただけましたか?」

「……わからないね。ちっとも」
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