悪役令嬢はラスボスの密偵として学食で働くことになりました
初めはリシャールが校長であることに不安もあった。けれど今は、この人が校長であるべきだと心からそう思う。そのためにも邪魔者を排除するのがカルミアの役目であり、密偵としての心構えも諭されたような心地だ。
そうして二件目のレストランで軽く食事を済ませると、再度今度の予定が話し合われた。
「私はこれから買い物をして帰ろうと思います。学食も明日から本格始動なので、身体を慣らしておかないと。腕が鈍ってはいけませんから」
「では私は荷物持ちですね」
「い、いえ、さすがにそこまで付き合わせるわけには!」
「我が校の生徒のために尽力して下さると聞いて放ってはおけません。先日のかごも随分と重いようでしたから、お一人では大変でしょう」
「あれはっ! 船のみんなに差し入れを用意していたので、あそこまでの重さは買いませんよ!? というか、あれは私一人で食べる量じゃないですから! 誤解しないで下さいね!」
「そうだったんですか……」
含みのある言い回しは誤解されていたに違いない。
結局リシャールは宣言通り荷物持ちとして最後まで同行してくれた。
そして別れが迫った時、カルミアは自然とその言葉を口にしていたのだ。
「今日はありがとうございました。リシャールさんもせっかくのお休みだったのにすみません。でも、おかげで楽しい一日でした」
(そういえばリシャールさん、ちっとも仕事の話を持ち出さなかった。むしろ私の話を聞いてくれて、一緒にご飯を食べてくれて、買い物を手伝ってくれて……普通に楽しかったわ)
学園で顔を合わせた瞬間には気まずさを感じていたはずが、楽しい一日で終わったことに驚かされている。また次があれば嬉しいとさえ感じていた。
「また食事の予定があれば付き合いますよ」
それはカルミアも望んでいたことだ。あまりにも都合が良すぎて心を読まれたのかと本気で思ってしまった。
ただし今日からは実践あるのみ。毎食試作に費やすため外食の頻度は減るだろう。けれどリシャールの笑顔を前に告げるのは忍びなく、カルミアは別の提案をすることにした。
「お誘いありがとうございます。あの、もし良ければ今度は私の料理も食べてもらえませんか?」
「もちろんです。私はカルミアさんの料理のファンですからね。喜んで」
こうしてカルミアの休日は無事に幕を下ろした。蓋を開けてみれば拍子抜けするほど呆気なく、楽しい気持ちを胸に終えていたのだ。
そうして二件目のレストランで軽く食事を済ませると、再度今度の予定が話し合われた。
「私はこれから買い物をして帰ろうと思います。学食も明日から本格始動なので、身体を慣らしておかないと。腕が鈍ってはいけませんから」
「では私は荷物持ちですね」
「い、いえ、さすがにそこまで付き合わせるわけには!」
「我が校の生徒のために尽力して下さると聞いて放ってはおけません。先日のかごも随分と重いようでしたから、お一人では大変でしょう」
「あれはっ! 船のみんなに差し入れを用意していたので、あそこまでの重さは買いませんよ!? というか、あれは私一人で食べる量じゃないですから! 誤解しないで下さいね!」
「そうだったんですか……」
含みのある言い回しは誤解されていたに違いない。
結局リシャールは宣言通り荷物持ちとして最後まで同行してくれた。
そして別れが迫った時、カルミアは自然とその言葉を口にしていたのだ。
「今日はありがとうございました。リシャールさんもせっかくのお休みだったのにすみません。でも、おかげで楽しい一日でした」
(そういえばリシャールさん、ちっとも仕事の話を持ち出さなかった。むしろ私の話を聞いてくれて、一緒にご飯を食べてくれて、買い物を手伝ってくれて……普通に楽しかったわ)
学園で顔を合わせた瞬間には気まずさを感じていたはずが、楽しい一日で終わったことに驚かされている。また次があれば嬉しいとさえ感じていた。
「また食事の予定があれば付き合いますよ」
それはカルミアも望んでいたことだ。あまりにも都合が良すぎて心を読まれたのかと本気で思ってしまった。
ただし今日からは実践あるのみ。毎食試作に費やすため外食の頻度は減るだろう。けれどリシャールの笑顔を前に告げるのは忍びなく、カルミアは別の提案をすることにした。
「お誘いありがとうございます。あの、もし良ければ今度は私の料理も食べてもらえませんか?」
「もちろんです。私はカルミアさんの料理のファンですからね。喜んで」
こうしてカルミアの休日は無事に幕を下ろした。蓋を開けてみれば拍子抜けするほど呆気なく、楽しい気持ちを胸に終えていたのだ。