メーティスの牙

ネブラスカ州は、アメリカの中西部に位置する。牛肉やトウモロコシの産地として知られている。なぜなら、ネブラスカ州はグレートプレーンと呼ばれるように、平らな大地が広がり放牧や農業に適した土地だからだ。

「ネブラスカは物価も安く、治安もいい。逆に都会の方が人が集まるということで犯罪が起きやすいんだ」

何も知らないのか、と言いたげな目を玲奈から向けられ、透はそれを誤魔化すように質問する。

「なあ！何で急にアメリカに行くことになったんだよ。動物たちの世話は美咲さんがしてくれるから問題ないけどさ……」

アメリカに行く目的を、玲奈は出発しても教えてくれなかった。アメリカには数多くの観光スポットがあるが、玲奈がただの観光目的で出かけることがないということは、透はよく知っている。

「友人に会いに来た。私と同じ寄生虫学者をしている」

玲奈の言葉に、透は驚いた。人と群れるということを嫌っているような玲奈に友達がいることが意外だったのだ。