メーティスの牙

「二人とももっと女性らしい話はできないわけ？」

透がそう言うと、「ちょうどよかった。助手、コーヒーを用意しろ」と話を聞いていないのか、顕微鏡を夢中になって見つめる玲奈が言う。この時の玲奈に何を言っても無駄だ。ジェニファーも玲奈の横ではしゃいでいるので、仕方なく透はキッチンに立つ。

その時、「ただいま〜……」という声がした。マイケルが帰ってきたのだ。ジェニファーと玲奈がリビングのドアを同時に見る。

「マイケル！あなた、その手どうしたの！？」

ジェニファーが驚きの声を上げる。マイケルの手からは血が流れていた。透はキッチンから出てマイケルの傷を見る。

「これは……何か動物に噛まれた？」

透が訊ねると、マイケルは「すっげえ可愛い猫がいてさ。触ろうとしたら噛まれた」と無邪気に笑う。玲奈とジェニファーは鋭い目をした。

「マイケル！野良猫や野良犬には触らないように言ったでしょ！？狂犬病にかかったらどうするの！！」