彼岸の狐
「そ、そういえば貴女名前は!?ま、まだ聞いてなかったわよね!?」

「そ、そうだね!?」

「誤魔化し下手だな。あ、そうだ、このゴツい体格の此奴はタフ。精神も筋力的にも強いからタフだ」

「ゴツいってのは言わない約束でしょ」

ゴツい男ータフはツララに圧をかける。

「へいへい」

そんな会話をしていると運転席らしきところから声が聞こえてきた。

「…ったくお前ら少しは静かにするって事を知らんのか」

顔を上げたその男は四角い眼鏡をかけた男だった。

「ああすまないマルク」

ツララは素直に謝る。

先程の態度はどこへ行ったのやら。

マルクと呼ばれた男は眼鏡をかけ直しながら
少女の元へ歩いた。

「この子どうしたんだ?」

「馬鹿メトラが連れて来た」

「馬鹿って言うな馬鹿って」

「十分馬鹿だろ」

「ちょっとお前ら黙ってろ」

「「ウッス」」

マルクの圧でツララとメトラは黙った。

謎のマルクの圧…。


「あ、えーと俺はマルクな。あの3人はもう知ってるよな。俺は主に彼岸狐の科学系を担当してる。彼奴らがつけてる装備は俺の開発。」

「そうなんですか…。」

「彼奴らうるせぇけど特に悪気はねぇんだ。
 気にしないでやってくれ。いつもの事だから」

そう言うと、マルクはフ、と微笑んだ。


「あら、珍しい」

「何がだよ。あとお前らクソうるせぇ」

「マルクが笑ったの久しぶりに見た…」

「同意」

「何だお前らそんなに俺の笑顔見たいのかよ」

「「「いや?」」」

「ぶっ飛ばすぞテメェら
 つか、ライトはまだか?」

「ライト…?」


少女は首を傾げながら呟く。


「ライトってのはもう1人の俺らの仲間」

「夜目がすごく効くからライトなのよ〜」

「名前…皆さんで付け合ってるんですか?」

「ああ」

「ちなみにマルクはドイツのお金よ」

「ホントはマルクスの方が良かったんだけどな」

「何か文字数が嫌って言う話になって」

「マルクになったんだよ」


話が始まるとすぐに意気投合する4人。

少女は少し羨ましくなった。

今まで少女には友達やら仲間などと呼べる者が
いなかったからだ。

すると少女は何を思ったのかこう言った。


「あの、私にも名前つけてくれませんか?」

「…お前名前無いのか?」

「はい…その場その場で適当に決めていたので」

「じゃあどうしようかしら」

「どうせなら可愛い名前がいいんじゃ無いか?」

「…キラン」

「あー良いな…ってライト!?」

「いつからいたのさ!!」

「…彼奴が名前つけて欲しいって言った所から」


黒髪に少し茶髪が混じった髪色。

後ろで一つに結い、肩にかけている。

目は猫のような瞳ですごく綺麗だ。

よく見ると右目下から左目の
上辺りまで傷がある。

とは言っても右目は前髪で隠れて分からない。

帰ってきたばかりだからか黒と橙色の
狐面を片手に持っていた。

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