彼岸の狐
「…キラン、ね…」

ツララはふと呟いてライトの方に向き直す。


「ライト、ちなみに聞くが由来は?」

「…目が綺麗な色だし、声も綺麗。
 髪も艶があってサラサラで綺麗、だから。」

「だってさ。どう、『キラン』」


ツララは首だけ『キラン』の方に向く。

『キラン』は少し戸惑いつつも、


「ありがとうございます」


と、ふわりと微笑んだ。

それを見たツララ、マルク、メトラは驚いた。

ツララの場合驚いた、というより顔を顰めた、
という方が正しいだろう。

その反応に気づいたタフ、ライトは


「どうしたのよ3人とも浮かない顔して」

「…嫌だったか?」


と、心配そうに見ている。


「いーや、特に何もない」


ツララは顔を背けて伸びをした。

そして立ち上がると、メトラに言った。


「ところでメトラ」


「え、あ、ん?」


「連れてきたは良いけど此奴どーすんの?」


と、キランを指差す。

それを聞いたメトラはと言うと…
笑ったまま青ざめて硬直していた。


「まさかとは思うが『考えてなかった』なんて
 言わないよなぁ?」


ドスの効いた声で、ニッコリと笑みを浮かべて
メトラに尋ねる。


「すいません、考えてなかったです…」


少しツララから目線を逸らして言う。

ツララはその言葉を聞いて怒りが頂点に達した。


「よし、メトラお前相当俺の氷に刺されたいよう
 だなぁ?」


「ちょちょちょい待ち!!」


「待たん!!“氷柱地獄”!!」


ツララの掌から氷柱が大量に出てくる。

しかもかなり鋭利な氷柱だ。


「や、やめて下さい!!」


キランがメトラの目の前に立つ。

両手を広げてメトラを庇うように。

ピタリ、と、氷が止まった。


「退いてくんない?テメェには関係ねぇだろ?」


ガシッ!!

マルクがツララの肩を掴んだ。


「いや、キランの言う通りだ。それにツララ。
 俺は前にもココで氷を出すなって言ったよな」


ツララは「チッ」と舌打ちをして氷を消した。


「離せマルク」


乱暴にマルクの手を払う。

ツララはこのメンバーの中で1番短気で
怒りやすいらしい。


「言っとくけど、俺は反対したからな」


ツララはそのまま部屋へ戻っていった。


「あー…気、悪くしたらごめんね。
 彼奴あんま心開かねぇからさ。」


マルクはそう言って笑う。

彼らはなぜか全員傷がある。

もしかしたらそれが彼らの過去や
いろんなものに繋がっているかもしれない。

メトラは右目を失明。

ツララは左目と右頬。

マルクは右目、左頬、額、首。

ライトは顔のど真ん中。

タフは額に二つの傷。

全員それぞれ傷がある。

そしてそれはお面に描かれている傷と
一致していた。

…何か関係しているのだろうか。

密かにキランはそう思った。
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